日通野球部 最新情報

最後に待ち受けていた“魔のフライ” 延長10回サヨナラ負けで初戦敗退

第91回都市対抗野球大会 1回戦
2020年11月26日 東京ドーム

1回戦
2020年11月26日(木)東京ドーム

チーム 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
さいたま市・日本通運 0 0 0 0 2 0 0 0 1 2 5
大津町・Honda熊本 1 0 0 1 0 0 0 0 1 6

スコアボード詳細

マッチリポート

さいたま市代表・日通にとって、6年連続45回目の大舞台となる。1回戦の相手は九州代表・Honda熊本で、こちらは5年連続14回目の出場。都市対抗出場を決めたとき「各チームの実力差が小さく、1試合1試合がヤマ場になる。逆に言えば、どのチームにも優勝のチャンスがある」と意気込みを語ったのは主将の浦部剛史で、日通は5試合を戦い抜いて社会人野球の頂点に立つべく、十分な準備をして臨んでいた。

しかし、主将の言葉どおり都市対抗に簡単な試合はひとつもなく、初回から難しい展開になった。1回表に先頭打者・添田が四球を選んで出塁し、2番・浦部が2ストライクのときに盗塁を試みた。浦部は空振り三振、さらに浦部が捕手の送球を妨害したと判断されランナーの添田もアウトとなり好機を逸した。「相手のリズムが悪いときの逸機で、少しもったいなかった」と澤村監督は振り返った。2回表も3つの四死球で2死満塁と攻め立てたが、9番・高橋俊が遊ゴロに倒れた。塁上にランナーは出るものの、制球の定まらない相手投手を打ちあぐね、日通は4回を終えてノーヒットだった。

先発・相馬は初回に先頭打者ホームランを許したが、2回裏、3回裏は3人で抑え、安定感をみせていた。しかし、4回裏に3本のヒットを浴びて追加点を奪われ、序盤で2点のビハインドとなった。

嫌なムードを払拭したのは5回表だった。先頭打者の7番・諸見里が四球で出塁、続く8番・木南の犠打が相手エラーを誘い、無死1、2塁とした。9番・高橋俊は三振に倒れたが、「なんとか流れを持ってこようと思った」という1番・添田が初球を右翼線に弾き返し、この日のチーム初ヒットでまずは1点を返した。さらに、1死1、3塁から2番・浦部の犠飛で1点を追加し、日通は試合を振り出しに戻した。

同点に追いついて試合の流れを引き寄せたい日通は、先発・相馬が6回を、2番手・庄司が7回をそれぞれ三者凡退に抑え、味方の援護を待った。しかし7回表の1死2塁で9番・高橋、1番・添田がいずれも内野ゴロで凡退、8回表の1死満塁のチャンスでは6番・大谷、7番・諸見里が相手投手の変化球をとらえられず、連続三振に終わった。ここであと1本が出ていれば結果は違っていたかもしれない。

日通は9回表、8番・木南が内野安打で出塁し、9番・高橋が送って1死2塁。1番・添田が内野ゴロで2死になると、2番・浦部が申告敬遠で2死1、3塁となる。ここで、「投手が左利きだったので、自分との勝負に来ると思っていた。準備はできていた」という3番・稲垣が左前タイムリーを放ち、ついに1点を勝ち越した。

9回裏からは満を持して経験豊富な池田をマウンドに送ったが、Honda熊本は粘りのチームだった。2死3塁とされ、代打・持永選手にカウント2-2から左前へ同点タイムリーを許し、試合を終わらせることができなかった。

延長10回からは大会規定により、1死満塁の打順選択制のタイブレーク方式が採用された。先行の日通は3番・稲垣からの打順を選択し、押し出し四球と4番・北川の内野安打で2点を奪った。しかし、1死満塁のタイブレークにおいて、2点は決してセーフティリードではなかった。10回裏、先頭打者を三振に打ち取り、2死満塁。あとアウトひとつで2回戦進出だった。打者を3-2と追い込み、あと1球まできていた。「相手はボールの見極めがよく、際どいボールはカットされていました。3-2となり、四球は出したくなかったのでストレートでいきました」(池田)
「点差を考えると、3-2になったところで外野の守備位置を後方に下げないといけません。2点差という状況を考えると、投球と同時に走り出す1塁ランナーをホームに帰すわけにはいきません」(澤村監督)

各選手の守備位置、池田が投じた1球。いずれもセオリ―通りで、打者がとらえた打球は左翼線への凡フライとなった。多くの人が勝利を確信したが、東京ドームのデーゲームでは高く上がったフライは天井とボールが同化し、見づらく、取りづらい。ポジションを後方に下げていたレフトはそもそも間に合わず、サード、ショートも対応できなかった。完全に打ち取っていたフライがレフト前に落ち、投球と同時にスタートしていた3人の走者がホームを駆け抜け、日通は土壇場で勝利に見放された。

「打った瞬間は見えていましたが、ヒットならば中継プレーを考えなければならず、ムリに追いかけられませんでした」(サード稲垣)
「あの瞬間、ショートはレフトの打球だと感じたと思います。打ち取ったフライでしたが、東京ドームは1度ボールから目を切ってしまうと見えづらいです。レフトは下がっていたし、難しく、少し厳しい状況でした」(池田)

立ち上がりから緊迫感のあった接戦は、思ってもみなかったカタチで決着した。残ったのは2年連続初戦敗退という結果だった。澤村監督は「昨年1回戦で負けていたので、勝ち進まないといけないと考えていました。勝ちきれず、本当に悔しいです。勝敗を分けたのは、勝負強さの部分で、ほんの少しの差だと思います。来年はそれを課題に取り組んできます」。

新監督のもと、心機一転して臨んだシーズンだった。コロナ禍の難しい状況のなか、予選を突破して6年連続で東京ドームの舞台に立った。そして、そこで勝つことの難しさを、その東京ドームが教えてくれた。「どのチームも差はありませんが、1球の重みを感じました。入社2年目となる来年は、チームを引っ張る気持ちで取り組みます」と語るのは添田だ。日通野球部は突きつけられた課題を克服すべく、来期の戦いに向かう。

コメント

澤村幸明監督のコメント

勝ちきれず、悔しい敗戦になりました。チャンスで得点を重ねていれば、延長戦になっていない試合です。先発の相馬はオープン戦の状態から判断して、1週間ほど前に「先発でいこう」と決めていました。打たれる場面もありましたが、粘り強く投げてくれました。2番手の庄司もそうだし、抑えの池田も信頼して起用しました。最後は追い込んでからの決め球という部分で、粘りきれませんでした。もっと東京ドームで試合がしたかったです。来年は勝負強い選手、ここぞという場面で1本を打てる選手を育てたいです。選手間の競争が激しくなると、チーム全体の底上げにつながります。その方法をスタッフたちと探りながら、決断すべきところは私が決断していきます。
今年はコロナ禍で大変な状況のなか、野球部として活動させていただき、応援もしていただきました。それなのに、この結果は申し訳ない思いでいっぱいです。勝つことで恩返ししたかったです。来年こそ、みなさんと勝って喜べるようにまた出直します。

池田望投手(9回裏から登板。打ち取るもサヨナラ負け)

失点するとしても、1イニング1失点まで。これを守れていた先発の相馬、2番手の庄司もしっかりと役割を果たしたと思います。自分は抑えないとダメな立場なのですが、失点してしまいました。後ろを任される投手は、三振を取れないといけない。追い込んだあとの決め球が大事です。後ろへいけばいくほど、三振を取れることが重要になってきます。これは私に限った話ではなく、来年に向けて、後ろを任される投手はそれだけ1球が大事で、難しさがあることを全員がわかっておかないといけないです。

稲垣誠也内野手(9回表に勝ち越しのタイムリーヒット)

(タイムリーは)左のサイドスローに対して、身体を開くとセカンドフライになったり、バットを折られたりすると思っていました。逆らわずに打ったことで、三遊間に飛びました。試合の中ではいけると思った瞬間もありましたが、詰めが甘かったです。あと1アウト、1ストライクが取れなかったです。1球の怖さ、重みを感じました。高く上がったフライに関しては、練習のときに声で自分のポジションを伝えるなど対策していました。最後のシーンは悔いが残ります。勝ちきれず、ホントに悔しいです。この経験を来年に生かします。

添田真海・指名打者(5回表にチーム初ヒットでタイムリー)

初回に失点しましたが、スコアは気にせず、自分たちの野球をしようと話していました。四球を選べていたので、チャンスは作れていました。(タイムリーヒットは)なんとか流れを持ってこようと思って打席に入りました。9回表に勝ち越し、いけるという雰囲気になりましたが、最後まで何が起こるかわからないので心の余裕はなかったです。入社1年目に目標だった都市対抗に出場できて、よい経験になりました。1球の大事さ、1球の重みを感じました。来年は2年目になるので、チームを引っ張る気持ちで取り組んでいきます。

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