SPECIAL FEATURE PROJECT

物流の仕組みを変える
プロジェクト

いままで前例のなかったライバル企業同士のモーダルシフトを実現した、共同輸送プロジェクト。
物流と地球環境の課題を解決するため大手ビールメーカー2社が手を組み、
日本通運が物流スキームを構築したプロジェクトの舞台裏に迫る。

安定的な物流ネットワーク構築と
環境問題解決のため、
ライバル同士をつなぐ物流で
改革を巻き起こす。

INTRODUCTION

モーダルシフトとは?

トラックをはじめとする自動車で行われる貨物輸送を、環境負荷がより小さい鉄道や船舶に転換することをモーダルシフトと言う。CO2の排出量抑制やエネルギー消費効率の向上の他、物流業界の人材不足への対策としても有効。環境負荷の低減は企業の社会的責任(CSR)として注目されており、共同配送や輸送網の集約などと共に取り組まれている。

PROJECT MEMBER

髙市 将
1989年入社。高松支店、徳島支店、四国支店を歴任し、現在は営業開発部(食品・飲料)部長を務める。大手ビールメーカー2社による共同輸送プロジェクトをスタート時から担当し、日本通運の組織力を活かしてプロジェクトを成功に導く。
岡本 悠
2012年入社。群馬支店群馬アローセンター、前橋支店食品ロジスティクス事業所前橋営業課で現場を経験した後、現在は営業開発部(食品・飲料)に所属。ビールメーカー4社間の共同輸送プロジェクトを担当するなど、さまざまなプロジェクトに取り組む。
PHASE_01

安定した物流の実現と環境問題の解決を目指して。

ビール業界最大手のA社とB社。ライバルとしてしのぎを削る2社は、2011年に業界として前例のなかった物流面での協業をスタートさせた。その背景にあるのは、深刻なドライバー不足とCO2の排出量削減という課題。従来は各社ごとに製品の輸送を行っていたが、将来的に安定した物流ネットワークを構築し、社会的な環境問題に向き合うためにも、業界を牽引する2社が出した答えは、「協業で物流体制を構築する」というものだった。

中でも物流面で課題を抱えていたのが、石川県・富山県への輸送。従来、このエリアへの製品供給は大型トラックによる直送体制をとっていたが、将来的に製品の供給が困難になると予測されていた。そして2015年、この大きな問題を解決するパートナーとして抜擢されたのが日本通運だった。当時のことを髙市はこう振り返る。

「日本通運は北陸をはじめ日本全国に物流拠点を有しており、貨物駅から先の配送まで担えるだけでなく、鉄道輸送や倉庫管理にも一貫して対応しています。これらの強みを評価していただき、共同輸送プロジェクトを任せてもらえたと自負しています」。

PHASE_02

物流ネットワークの前提を覆す大胆な提案。

石川県と富山県への配送は従来、A社が名古屋工場、B社が名古屋工場と滋賀工場を供給拠点としていた。現在のトラック輸送の区間を鉄道輸送に置き換えることも検討したが、この場合、列車の運行数の多い路線を利用する必要があり、今回の輸送量をカバーできる貨物列車が、物量的にも配送時間的にも対応できないという課題に直面した。

共同輸送の鍵は大量輸送が可能であることだったため、この課題をクリアできなければプロジェクト自体が白紙となる可能性もあり、クライアントの要望や現状を十分にヒアリングし、プロジェクトパートナーのJR貨物と何度も協議を続けた。その中で、関西エリアから北陸エリアを結ぶ貨物列車が、北陸から関西向けは高い積載率で運行をしているが、反対に関西から北陸向けについては積載率が低く、空のコンテナを積載し運行していることが判明した。「もし、この貨物列車をうまく活用できれば今回の課題解決につながるかもしれない」。髙市は、そう直感した。そこで出した答えは「メーカーの供給拠点を従来のエリアから関西エリアに集中させ、北陸エリアに供給する」という提案であった。

それは、従来の物流体制を大きく覆すものだった。そのため、クライアント2社は経営層や営業部門、生産部門をはじめとする関係各所を巻き込み検討を重ねた。その結果、生産工場の変更という大きな課題まで受け入れた上でモーダルシフトを推進することとなった。

PHASE_03

全社が一つのチームとなりプロジェクトを推進。

「2社の決断に、ドライバー不足への対応やCO2削減に向けた並々ならぬ意志を感じました。飲料・食品メーカーは消費者への供給責任が伴います。その社会的責任を支えるためにも、日本通運の組織力を発揮する必要があると身に染みて思いましたね」。

髙市はクライアントの期待に応えるため、金沢市内の倉庫に約3,300平方メートルのスペースを確保。その他にも、集配用車両の増強や出荷日順にコンテナを並べる仕組みを構築するなど、事務負担の軽減や輸送品質向上に向けた施策を展開した。

これらの施策が功を奏し、当該エリアのトラック1台・1運行あたりの加重平均走行距離は現行比の70%減、ドライバーの運行時間は現行比30%減まで抑制することに成功。また、年間でトラック10,000台相当を鉄道輸送に転換することで、CO2排出量は現行比56%減まで圧縮することができた。社会的にも注目度の高かった当プロジェクトについて、髙市は笑顔で語る。

「共同輸送プロジェクトが成功した一番の理由は、当時の4社の担当や部長、そして担当役員まで全員が一つのチームとして取り組み、強い意志を持って推進できたことだと思います。日本通運も各地の関係各所と連携し、お客様のためにやり遂げるという強い思いを持ってプロジェクトに挑むことができました」。

PHASE_04

異業種間のモーダルシフトで社会課題を解決。

2017年からは新たにC社、D社を加えた4社による共同輸送プロジェクトを開始。北海道道東地区への共同配送からスタートし、2018年には関西‐九州間でのモーダルシフトを推進。現在、当プロジェクトを担当する岡本はこう語る。

「運休している鉄道路線を復活させ、今回の4社共同輸送を実現しました。お客様によって物量や使用している資材が異なるため、各社の要望や意見をくみ取って調整することに注力しました。また、お客様の経営戦略を常に意識してコミュニケーションをとることが重要になってきます。我々に求められることは課題を発見して改善案を提案することなので、一つの施策に対する影響まで広く調査するようにしています」。

今後目指していくのは、異業種間でのモーダルシフト。物流と地球環境の課題にアプローチするためには、必ず成し遂げるべきだと岡本は考える。

「モノが各地に届くというのは、もはや当たり前のことではありません。将来的には、私が新たなかたちのモーダルシフトを主導して企画し、社会に貢献していきたいですね」。

安定的な物流を実現するためのモーダルシフトプロジェクトは、今後も新たな展開を見せていくことだろう。

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