SPECIAL FEATURE PROJECT

データサイエンスで
物流を変革するプロジェクト

グローバル化を進める多数の企業が抱える大きな課題が、生産と消費を結ぶサプライチェーンの最適化だ。
この難題に日本通運は、データサイエンスを駆使した物流ソリューションで応えようとしている。

データサイエンスを武器に
グローバルサプライチェーンを最適化。
想像を超えるソリューションで
グローバル企業の経営に貢献。

INTRODUCTION

サプライチェーンデザインとは?

サプライチェーンとは、原材料の調達から生産、流通、小売を経て消費者に製品を届けるまでのプロセスのこと。従来、サプライチェーンは、製造拠点の配置を軸に展開されてきたが、現在は消費市場におけるニーズの多様化、自然災害やパンデミックなどの不確実性への対応を考慮した設計が求められるようになってきている。サプライチェーンデザインとは、既存のサプライチェーンから生成される多種多様で膨大なデータ“ビッグデータ”から、サプライチェーンをモデル化し分析することで、最適なサプライチェーンの仕組みをデザインすること。

PROJECT MEMBER

石橋 修
2007年入社。顧客企業のニーズに応える物流拠点の新規立ち上げを数々手掛け、香港でも海外拠点の立ち上げを経験。2018年よりグローバルロジスティクスソリューション部に在籍し、データ分析のエキスパートとして、グローバルサプライチェーンの最適化提案を手掛ける。
PHASE_01

“データドリブン”で、グローバル企業のサプライチェーンを変える。

日本通運には、データ分析の専門チームがある。チームのミッションは、ビッグデータからモノの軌跡を追い、最適な製造拠点や輸配送ネットワークをスピーディーに分析し、最適なサプライチェーンをデザインすること。このチームを率いるのが石橋だ。

「昨今、日本企業のグローバル化はますます加速しています。事業のスケールが拡大する中、生産から販売に至るグローバルサプライチェーンに課題を持つお客様は多い。特に最近は、“データドリブン”、すなわちデータ分析による合理的な根拠に基づいた経営を志向する企業が増えています。しかし、いろいろなデータを持ってはいるものの、それをどう解釈すればいいかわからないというお客様も多い。そのような課題を解決するソリューションを有する我々に寄せられる期待が大きいと感じています。当社は、物流に関して圧倒的な経験とノウハウがありますが、我々のチームはそれに加えて、データ分析のエキスパートとしてお客様のビジネスをサポートしています」。

そんな石橋のもとには絶えずお客様からオファーが寄せられ、数々のプロジェクトが現在進行している。その中でも、データ分析の重要性を再認識したのが、大手電子部品メーカーのグローバルサプライチェーンの最適化だ。

PHASE_02

データを分析して「重心点」を探り、
最適なネットワークをゼロベースからデザイン。

その大手電子部品メーカーのお客様は、サプライチェーンに関してどんな経営課題を抱えていたのか? 石橋は語る。

「お客様は自動車用の部品を中国の工場で生産し、欧州各地の自動車メーカーに向けて供給していました。中国から欧州への製品輸送は、東シナ海からインド洋を経て地中海に至る海路を利用していましたが、リードタイム(出荷から納品までの時間)の短縮と、コストを削減したいという強いご要望をお持ちでした。そこで我々は、お客様のビッグデータからモノの軌跡を追い、最適なサプライチェーンの再設計に向けて分析を行うことにしました」。石橋がまず着手したのは、納品先である欧州の「重心点」のあぶり出し、すなわちどこにどれだけ納品しているのか全体像を把握し、その物流の要所を特定すること。ただ、分析に必要なデータをお客様が保持していないことも多かった。

「データ不足だからわかりませんでした、とはならないのが当社です。これまでに培った独自のノウハウと分析ツールで不足情報を導き出しました」。

分析の結果、重心点がヨーロッパの内陸部にあることが判明。ここに物流のハブ拠点を構えて各地に出荷すれば、サプライチェーンを最適化できる。しかし現状の海上輸送では、中国から届いた製品を港から内陸部まで運ばねばならず、ロスが大きい。この問題をいかにクリアするかを検討することになった。

PHASE_03

ベストな道の追求にこだわり抜く、
“We Find the Way”で、お客様の想定を超える。

「一帯一路における中国と欧州を結ぶ鉄道ルートは“中欧班列”と呼ばれています。日本通運は過去、国土交通省が主導するシベリア鉄道の貨物輸送パイロット事業や、経済産業省の委託事業に参画し、日本企業がこの中欧班列を活用することで物流にどんな効果が見込めるかという実証試験を行いました。その結果、日本通運はいち早く国際鉄道輸送をサービス展開していたため、欧州内陸部までダイレクトにアクセスできるこの国際鉄道輸送のネットワークを上手く利用できないか?と考えたのです」。

すぐさま担当部署と連携。国際鉄道輸送を利用した物流スキームの構築に取りかかった。結果、大陸を横断する鉄道の利用が、課題であったリードタイムの短縮と、コスト削減の両方に効果的であるという結論を導き出した。

「いままでずっと海路を利用してきたから港を基点に考えるという、これまでの常識にメスを入れたこの提案は、お客様の想定を超えた発想で、さらに数十億円ものコスト削減を実現するというインパクトもあり、高い評価をいただきました」。

PHASE_04

デジタル化をチャンスと捉え、当社の強みを昇華させる。

この大手電子部品メーカーの新たなグローバルサプライチェーンは、いままさに、提案した内容を実行しようと動き始めている。これが、当社でデータ分析を担う醍醐味だと石橋は言う。

「物流に関するコンサルティングを手掛ける企業は世の中に多数ありますが、我々はただ机上でデータを分析してプランを提示するだけではありません。日本通運のさまざまな部署と連携して、プランを実現するところまで関わっていく。日本通運は“We Find the Way”という企業メッセージを掲げていますが、このメッセージ通り、「ただ一つの最善の方法を見つけ出し、必ずやり遂げる」という想いが根付いた企業であると実感しています。新しい物流の可能性を探求し続ける日本通運だからこそ、堪能できる醍醐味だと思います」。

石橋は今後、AI(人工知能)やIoT、5Gなどの先進技術を究めるスタートアップ企業とも連携し、このデータ分析によるソリューション提案をさらに進化させていきたいと考えている。

「いま、物流業界にもデジタル化の大きな波が押し寄せており、それに乗り遅れると市場から淘汰されかねない。いかにこの状況をチャンスと捉え、当社の強みを昇華させることができるのか、まさにそれがいま言われるDX(デジタルトランスフォーメーション)だと思います。この課題に全力で取り組むことで未来を切り拓いていきたいと思っています」。

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