賃貸物件の"楽器演奏不可"、スピーカーもNGなの? 法律の専門家が解説

賃貸物件を契約するとき、禁止事項に「楽器演奏」と書いてあるのが気になったことはありませんか? 「楽器演奏」とは、具体的にどういった行為を指すのでしょうか。例えば、大声で歌ったり、大音量のスピーカーで音楽を聞いたりするのは? 法律上の観点から解説します。

賃貸は楽器不可の物件がほとんど?

賃貸物件内での禁止事項は、契約で自由に定めることができ、楽器の使用についても法律の制限はありません。契約書の禁止事項に「ピアノ不可」「楽器の持ち込み不可」「演奏不可等」の記載があったりもしますが、通常は「楽器使用不可」とされているのが多いようです。一般的に、楽器演奏時に出る音や振動等が、大家さんや他の住人等周囲の人々に迷惑が及ぶ可能性があるからです。

そのため、賃貸物件では、ピアノ(電子ピアノ含む)、ギター、エレキギター、トランペット、太鼓などのすべての楽器が基本的にNGと考えられます。

「楽器じゃなければOK」は間違い?

では、ホームシアター設備など、大音量のスピーカーはどうなのでしょうか。契約の内容次第ではありますが、こうした設備もご近所の方と騒音トラブルにつながる可能性があります。

楽器に限らず、"騒音を発生する可能性があること"が禁止されていれば当然契約上はNG。そうでない場合も、先ほど述べたように、楽器を始めとした騒音源、つまり"他人に迷惑を及ぼす物品"の持ち込みが禁止されている以上、周囲の人々がうるさいと思うものであれば原則禁止です。ホームシアターなどの大音量のスピーカーで映画を鑑賞するのも、原則NGとなるでしょう。

防音対策をとってもアウト?

消音機能のある電子ピアノのように、防音対策をした楽器なら大丈夫と思うかもしれませんね。しかし、騒音は単に"大きい音"だけを指すものではありません。

例えば、「固体振動音」というものがあります。ペダルを踏む振動音や、鍵盤をたたく打鍵音のように、床や壁などを伝って近くの部屋に響く性質を持った音です。楽器演奏という行為自体が騒音を生んでしまい、トラブルの元となることもありますので、賃貸物件では安易に楽器を使用するべきではないでしょう。

具体的にどれくらいだと違法になるの?

では、具体的にはどの程度の騒音を出すと"違法"となるのでしょうか。裁判では、個別具体的な音の大きさや頻度など、いろいろな事情を考慮した上で"受忍限度を超えるほどの音"とされた場合には違法とされています。一方、環境省が出している住宅地の環境基準では、昼間(午前6時~午後10時)は55デシベル以下、夜間(午後10時~翌午前6時)は45デシベル以下が基準値とされていますので、ひとつの参考になるでしょう。

ちなみに、洗濯機のモーター音は64~72デシベル、人の声は通常50デシベル、大声で90デシベルともいわれています。昼間、夜間を問わず騒音となってしまうことがありますので、時間帯や周りの環境への配慮を忘れず、迷惑を掛けないように注意してくださいね。

過去には損害賠償命令が下されたことも

実際のケースを見てみると、アパート1階の住人が深夜に発する騒音(歌を歌ったり、大声を出す等)が2階の住人の受忍限度を超え、適応障害や不眠症が生じたとして、1階の住人に対して60万円の支払いが命じられた判例があります。

別の判例では、分譲マンションに住む子供が深夜まで室内を走り回って歩行音を発生させたことで、下の階の住人に受忍限度を超える被害を生じさせたとして、約94万円(精神的苦痛に対する慰謝料額としては30万円)の賠償が認められています。

無音で生活することは不可能ですが、高価な楽器を買えるくらいの賠償を命じられることもある重大な問題だと心にとどめて、身勝手な生活は慎むようにしましょう。

まとめ

楽器の演奏を部屋でしたい場合は、物件を借りる前に、大家さん・不動産屋さんに演奏可能かどうかを確認しましょう。今住んでいる家のことを知りたい場合は、契約書楽器可と書かれているか見てみましょう。

ただし、"楽器可"の物件でも、防音工事までされていないことは多いです。20時以降の演奏はしない、遮音・防振効果のあるシートや防音カーペットなどを敷く、など、できるだけ音や振動が外に漏れない工夫を施すというのもトラブル防止策になります。

※画像はイメージ

記事について

出典元
マイナビニュース
掲載日
2016年9月20日
引越は日通

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