CASE.02
SAFプロジェクト

SAFを活用したCO2排出量
削減サービス構築プロジェクト

NXグループは、2023年に航空輸送サービス「NX-GREEN SAF Program」を開発し、2024年より販売を開始した。
持続可能な航空燃料SAF(Sustainable Aviation Fuel)を活用して、顧客のサプライチェーンにおけるCO2排出量の削減を支援するものだ。
この取り組みには、業界トップランナーとして社会的責任を果たすという強い想いが込められている。

CO2排出量削減の世界的な流れを受け、 SAFが生み出す環境価値を商品化。 トップランナーとしての責務を果たす。

INTRODUCTION

NX-GREEN SAF Program
とは?

SAFは主にバイオマスや廃食油を原料とする“持続可能な”次世代航空燃料だ。NX-GREEN SAF Programは、NXグループがSAFから得られる環境価値を調達し、NXグループの航空輸送を利用する顧客に第三者検証付きのCO2削減証書を発行することで、顧客のサプライチェーンにおけるCO2排出量を削減できる環境配慮型サービス。世界的にCO2排出量削減とその開示が強く求められる中、NX-GREEN SAF Programを活用することにより、顧客企業はTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)やCDP(企業・都市の環境情報の調査・開示に取り組む国際的非営利組織)などが求めるScope3開示情報に削減量を報告できる。

※Scope3とは

出典:環境省 グリーン・バリューチェーンプラットフォーム
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/estimate.html

PROJECT MEMBER

定月 啓一郎
2002年入社。営業、顧客駐在、商品開発など航空輸送分野でキャリアを重ね、イギリスに6年間駐在し国際勤務経験も豊富。2022年に航空フォワーディング部に着任。NX-GREEN SAF Programの開発を指揮する。
宮地 那奈
2009年入社。入社以来、トラックオペレーションの現場や人事などのバックオフィス、商品開発など多彩な分野で経験を積んできた。2022年に航空フォワーディング部に着任。NX-GREEN SAF Program開発チームにアサインされ、実務を担当。
PHASE_01

世界的なCO2削減への潮流

2015年、国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)でパリ協定が採択された。これを受け、CO2排出量削減は世界的な潮流となり、すべての産業・企業が、削減への取組みを加速させている。

ジェット燃料を使用する航空業界はCO2総排出量の数%を占めるとも言われている。そこで一躍注目を集めるようになったのが「SAF」だ。SAFは主にバイオマスや廃食油を原料とする“持続可能な”次世代航空燃料で、理論上、従来燃料に比べて約80%ものCO2を削減できる。日本通運は航空機こそ保有していないが、航空会社や船会社などと連携して、どんな貨物でもどんな場所にでも運ぶフォワーダーだ。

開発チームを指揮する定月は、開発の背景について次のように語る。「顧客企業は環境への取り組みや情報開示を求められる場面が増えています。物流においてCO2を削減する方法としてはモーダルシフトが効果的とされていますが、航空輸送でなければならない貨物ももちろん存在します。そのため、航空輸送が不可欠な貨物に対しても、脱炭素のソリューションを提供する必要がありました。そこで注目したのが、持続可能な航空燃料である『SAF』でした」。

PHASE_02

暗中模索と試行錯誤の
新商品開発

2021年にスタートしたSAFプロジェクトだったが、開発は最初の調査段階から難航した。プロジェクトの初期メンバーである宮地は、「暗中模索でした」と当時の状況を振り返る。「当時、SAFに関する知見は日本国内にはほとんどありませんでした。航空会社にSAFについてヒアリングしても有益な情報は得られず、利用に関するルールも未整備の状態でした。さらに、年間の航空燃料全体に占めるSAFの割合はごくわずかと供給も少ない中で、こんな状況で本当に商品化が可能なのか、見通しすら立たない状況でした」。

2021年10月に大手日系航空会社によるSAFを利用したサービスが開始され、早速プログラムに参画したものの、顧客である荷主企業向けのサービスとして展開するには至らなかった。またコンサルティング会社とも契約し、商品化に向けて知見を得ようとしたが、当時の日本のフォワーディング業界ではSAFを利用した事業の実績がなく、かえってSAFサービス開発の困難さを再認識させられる結果となった。

そんな状況を打開するきっかけとなったのは、ヨーロッパからの一本の電話だった。2022年7月、NX欧州から日本におけるSAFへの取り組みについて問い合わせがあり、それを契機にSAFのサービス化を進めることになったのである。ヨーロッパは環境対策が進んだ地域であり、NX欧州も顧客向け脱炭素物流サービスの提供を重要な目標に掲げていた。この協力をきっかけに、プロジェクトは一気に加速していった。

PHASE_03

サービス開始から1年かけての初契約

2023年は、開発チームにとって記念すべき1年となった。3月に、2021年に参画した大手日系航空会社によるSAFサービスの顧客展開が可能となり、セールスを開始。最初の成約は、海外売上比率が70%に達する大手電子部品・電気機器メーカーだった。

「これまでにないサービスだからこそ、認知され普及するまでには時間がかかります。セールス開始から約1年を要した背景には、顧客側でSAFに関する法務面での検証や、経営面での慎重な検討が必要だったからです。それだけ、このSAFの環境価値を活用したサービスが画期的だったということでしょう」と定月は振り返る。

さらに同年6月、欧州の航空会社と契約を締結し、ついにNXグループ独自の顧客向けSAFサービス『NX-GREEN SAF Program』の商品化が実現した。

「NX-GREEN SAF Programは、NXグループが提供するすべての航空輸送サービスで利用できる、カーボンインセットプログラムです。利用する路線や航空会社に制限がなくグローバルに利用できるサービスで、第三者検証付きのCO2削減証書をNXグループが発行することで、顧客企業のScope3削減に大きく貢献することができます」と宮地は語る。欧州で先行販売されたNX-GREEN SAF Programは、税務・会計処理の確認を経て、ついに日本でも2024年2月からサービスが開始されることになった。発足から3年を経て、プロジェクトは一つの大きな通過点にたどり着いた。

PHASE_04

真のゴールなき
業界トップランナーの責務

多くの困難を乗り越えて開発されたSAFサービスだが、実は大きな売上につながるものではない。定月はプロジェクトの意義を「業界トップランナーの責務」と話す。「地球温暖化防止対策としてScope3に焦点が当たるいま、サプライチェーンでのCO2排出量削減は企業にとって大きな経営課題です。各種法制面への対応も含め、企業の物流を担う我々に求められる役割も大きくなっています。近年は航空輸送を中心とした当社物流業務の入札において、SAFの提供が可能かどうかを問うお客様も増加しています。そうした需要の増加を見込み、いち早くサービス開発に取り組むことは業界トップランナーの社会的責務だと考えています」。

実際、NXグループは官民で構成されるSAFワーキンググループに参加する他、2024年には成田空港でSAFを活用した「Scope3環境価値」取引の実証試験も実施。日本におけるSAFの利活用において、先導的な役割を果たしてきた。さらに、8月からは東京都が荷主企業向けに実施するSAF活用促進事業の貨物代理店にも選定され、NX-GREEN SAF Programをさらに魅力的な商品にするための改訂作業に取り組んでいる。しかし、これもまだ最終目標ではない。

「世界中でSAFの増産が進んでおり、いずれはSAFが従来の航空燃料に取って代わる日が来るでしょう。すべての航空輸送でSAFが使われるようになれば、NX-GREEN SAF Programの役割は終わりを迎えます。しかし、その時にはまた新たな課題やニーズが生まれるはずです。そのような時代の変化を先読みして、顧客に大きな価値を提供できるサービスを創り上げること。それが私たち商品開発部門の変わらないテーマです。私たちには“ゴール”というものは存在しません」。

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