文書保存期間とは?
会社ではとても多くの文書(書類)を扱いますよね。経理・総務など企業活動の中で作成した文書(書類)の中には、会社法、法人税法、消費税法、雇用保険法など、さまざまな法律によって一定期間の保存が義務付けられているものがあります。
すでに役目を終えたと思っても、法律で決められた保存期間は保存しなくては罰則の対象になることもあります。
文書(書類)の保存期間を把握し、文書(書類)をどのように管理するかのルールづくりをすることは、会社にとってとても大切なことです。会社で作成される主な文書(書類)の保存期間をまとめましたのでぜひ参考にしてください。
永久に保存する文書(書類)
厳密にいうと法律で定められた保存期間はありませんが、文書の性質を考えると処分せずに永久保存しておくべき文書(書類)です。下記以外にも、法定の保存期間とは別に株主総会など重要会議の議事録、稟議書、重要決裁文書、税務申告書などを永久保存している会社もあります。
総務 | 定款 |
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株主名簿 新株予約権原簿・社債原簿 端株原簿 株券喪失登録簿 | |
登記・訴訟に関係する文書(権利証、判決書など) | |
官公署への提出文書 官公署からの重要な書類(許可書・認可書・通達など) | |
知的所有権に関する文書(特許証・登録証など) | |
社規・社則に関する通達文書 | |
効力が永続する契約に関する文書 | |
重要な権利や財産の得喪などに関する文書 | |
社報・社内報および重要な刊行物 | |
製品の開発・設計に関する重要文書 | |
人事 | 重要な人事に関する文書 |
労働組合との協定書 |
など
10年間の保存が必要あるいは望ましい文書(書類)
主に総務・経理で扱うこれらの文書(書類)は、会社法などで法的に期間が定められています。
総務 | 株主総会議事録(本店備え置き分。支店備え置き分はその謄本を5年保存)【会社法318条1項~3項】 |
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取締役会議事録(本店のみ)【会社法371条1項】 | |
監査役会議事録(本店のみ)【会社法394条1項】 | |
監査等委員会議事録(本店のみ)【会社法399条の11第1項】 | |
重要会議の議事録 法的に規定はないが、実務上望ましい。 |
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満期または解約となった契約書 法的に規定はないが、実務上望ましい。 |
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製品の製造・加工・出荷・販売の記録 PL法による。民法724条の規定では20年期限。製造物責任法第5条1項2号の定める消滅時効が当該製品を「引き渡した時から10年」と定められていることから、10年間は保存することが望ましい。 |
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経理 | 計算書類 附属明細書(賃借対照表・損益計算書など)【会社法435条2項~4項】 |
事業に関する重要書類(総勘定元帳・各種補助簿など)【会社法432条2項、会社法計算規則4条~56条】 |
など
7年間の保存が
必要な文書(書類)
主に経理で扱うこれらの文書(書類)は、法人税施行規則や消費税法などで法的に期間が定められています。
ここに記載してあるものでも、上記会社法で保存期間の定めてある文書(書類)については10年間保管が必要です(取引に関する帳簿、決算に関して作成された文書(書類))。
経理 | 取引に関する帳簿(仕訳帳・現金出納帳・固定資産台帳・売掛帳・買掛帳など) |
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決算に関して作成された文書 | |
現金収受や預貯金の取引で作成された取引証憑書類(領収書・預金通帳・借用書など) | |
有価証券の取引で作成された証憑書類(有価証券受渡計算書・売買報告書など) | |
取引証憑書類(請求書・契約書・見積書など) | |
電子取引の取引情報に係る電磁的記録
以上6点につき法人税法施行規則59条、67条、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則4条 |
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給与所得者の扶養控除等申告書、従たる給与についての扶養控除等申告書、給与所得者の配偶者控除等申告書、給与所得者の基礎控除申告書、給与所得者の保険料控除申告書、退職所得の受給に関する申告書
【所得税法194条~196条、203条、同法施行規則76条の3、77条】 |
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給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書
【租税特別措置法41条、同法施行規則 第18条の23】 |
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源泉徴収票
源泉徴収義務者はその申告書等の提出期限の属する年の翌年1月10日の翌日から7年間保存する必要がある。所得税法施行規則7条の3。ただし賃金台帳も源泉徴収票としてあつかうときはこれに従う |
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課税仕入等の税額の控除に係る帳簿・請求書など
帳簿についてはその閉鎖の日、請求書等についてはその受領した日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間保存することとされている。6年目と7年目については、いずれか一方を保存すればよい。消費税法施行令71条2項 |
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資産の譲渡等、課税仕入、課税貨物の保税地域からの引取りに関する帳簿
【消費税法施行規則50条】 その閉鎖の日の属する課税期間の末日の翌日から二月(清算中の法人について残余財産が確定した場合には一月とする。次項及び第三項において同じ。)を経過した日から七年間 |
など
他に、業種によっては労働安全衛生で扱う「粉じん濃度の測定記録」(粉じん障害防止規則26条8項)や「じん肺健康診断記録」(じん肺法17条2項)などの文書(書類)も7年間の保存が必要です。
5年間の保存が
必要な文書(書類)
主に総務・人事・経理で扱うこれらの文書(書類)は、会社法や金融取引法などで法的に期間が定められています。
総務 | 事業報告(本店備え置き分。支店備え置き分はその謄本を3年保存)【会社法442条】 |
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有価証券届出書 有価証券報告書 および関連書類【金融取引法25条】 | |
産業廃棄物管理票(マニフェスト)の写し【廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則8条の26】 | |
産業廃棄物処理の委託契約書【廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則8条の4の3】 | |
人事 | 従業員の身元保証書 誓約書など 作成日/身元保証ニ関スル法律1、2条 |
経理 | 監査報告(監査役設置会社等の場合。本店備え置き分。支店備え置き分はその謄本を3年保存)【会社法442条】 |
会計監査報告(本店備え置き分。支店備え置き分はその謄本を3年保存)【会社法442条】 | |
会計参与が備え置くべき計算書類・附属明細書・会計参与報告【会社法378条】 | |
金融機関等が保存する非課税貯蓄申込書・非課税貯蓄申告書など(写し)【所得税法施行令48条、所得税法施行規則13条、租税特別措置法施行令2条の21、租税特別措置法施行規則3条の6】 | |
金融機関等が保存する海外転勤者の財産形成非課税住宅貯蓄継続適用申告書・海外転勤者の国内勤務申告書など(写し) | |
金融機関等が保存する退職等に関する通知書 |
など
その他、契約期限を伴う覚書・念書・協定書などや、重要なやりとりに関する発信・受信文書は、法律の根拠はありませんが、契約の終了後5年程度は保存しておくのが一般的です。
業種によっては労働安全衛生で扱う「各種健康診断の個人票」(労働安全衛生規則51)や「安全委員会議事録」(労働安全衛生規則23)、「じん肺健康診断記録、じん肺健康診断に係るエックス線写真」(じん肺法17)などの文書(書類)も5年間の保存が必要です。
3年間の保存が
必要な文書(書類)
主に総務・人事で扱うこれらの文書(書類)は、金融商品取引法や労働基準法などで法的に期間が定められています。労務関係の文書(書類)の多くは最終記入日や完結した日から起算して3年間の保存義務があります。
総務 | 四半期報告書 半期報告書 および訂正書(写し)【金融商品取引法第25条7号8号】 |
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官公署関係の簡易な認可・出願などの文書 実務上望ましい |
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一般的な社内会議記録 業務日報 簡易な契約関連書類など 実務上望ましい |
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什器・備品台帳 消火設備点検書類 実務上望ましい |
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人事 | 労働者名簿 |
雇入れ・解雇・退職に関する書類 | |
災害補償に関する書類 | |
労働関係の重要書類(タイムカード・残業報告書・各種帳簿など) 以上4点については労働基準法109条、115条の2。令和2年4月1日から5年に延長されたが、経過措置として当分の間は3年となっている。 |
など
1~2年間の保存が
必要な文書(書類)
主に総務・人事で扱うこれらの文書(書類)は、金融商品取引法や雇用保険法施行規則などで法的に期間が定められています。
総務 | 臨時報告書 自己株券買付状況報告書 および訂正報告書(写し) |
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当直日誌 受信・発信文書など社内の簡易な文書 | |
人事 | 雇用保険に関する書類(雇用保険被保険者関係届出事務等代理人選任・解任届など) 【雇用保険法施行規則143条、ただし被保険者に関する書類については4年】 |
健康保険・厚生年金保険に関する書類(標準報酬改定通知書など) 【健康保険法施行規則34条、厚生年金保険法施行規則28条】 |
など
企業DXのトレンド
「文書電子化」
多くの文書(書類)に保存期間が設けられているので、適切に把握し管理することは難しいです。文書(書類)を「紙」のまま保存しようとすれば保管場所の確保にもコストがかかりますし、文書(書類)紛失のリスクもあります。
原本の保存が義務づけられている文書(書類)は「紙」として適切に管理する必要がありますが、それ以外の文書(書類)もすべて旧来通りに保存していませんか?
文書の中には「電子化」して保存できるものが多くあります。文書の「電子化」とは一般的に「紙」の文書をスキャナーなどで読み込んでデジタル管理(PDF化)することです。文書を電子化するメリットとしては、保管場所にかかるコストカットや、必要な文書(書類)を速やかに検索でき、業務の効率化が実現すること、また文書(書類)の紛失を防止できることがあります。
昨今、コロナ禍の影響もあってリモートワークが著しく進みましたが、このような社会情勢のもとでもペーパーレス化は必要不可欠といえます。
文書電子化のメリット
- 保存スペースの削減
- 保存管理コストの削減
- 検索や社内共有がしやすい
- 劣化や紛失のリスク軽減
- リモートワークの推進
しかし、社内でスキャナーなどを使って文書(書類)を1枚ずつ電子化していくのは大変な作業です。文書電子化を進める際には、信頼できる外部に委託することをお勧めします。
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記事監修: 弁護士 小川 貴之
2010年12月、弁護士登録 大阪弁護士会所属。
主な取扱分野は、一般民事全般、交通事故、債務整理・破産手続き、家事事件(遺言・相続問題)、少年事件等。趣味は将棋。