もう迷わない!初めてのオフィス移転マニュアル

オフィス移転マニュアル

 オフィスを移転することになったら、まず何からはじめればよいのでしょうか。多くの企業において、オフィス移転を頻繁に経験している担当者は少なく、「オフィス移転のプロ」と呼べるほど精通している人材も社内にはなかなかいないのが現状です。業務の拡大や固定費の削減、ワークスタイルの変化への対応など、移転する目的によってもその都度異なる点が多々あり、ケースバイケースの対応が必要になります。
 また、通常業務をしながら移転関連の業務にまで気を配るのは、なかなか骨が折れるものです。そこで、今回は「初めてのオフィス移転」に際して、移転の流れと押さえておきたいポイントをマニュアルとして紹介します。初めてオフィス移転の担当者になったら、このマニュアルを参考に進めていきましょう。

オフィス移転マニュアル 1.オフィス移転チームの立ち上げ

 オフィスを移転するには、さまざまな手間と時間、労力、コストがかかります。新オフィスの検討や各種手続き、業者との打ち合わせといったオフィス移転そのものの準備に加え、移転前後の社員への周知などまで幅広く対応しなければなりません。
 オフィス移転をスムーズに進めるためには、オフィス移転の専門チーム(移転準備室)を社内で立ち上げるのが一般的のようです。企業の規模にもよりますが、総務部の担当者を中心に、各部署から担当者を選出して協力を仰ぐようにしておくと、社内の調整もスムーズになります。特に、各自の荷物の梱包や現在のオフィスの片付けなどは、各現場との共同作業が不可欠です。総務部で全体に向けて取り仕切ることと、各部署で責任を持って進めていくことに分けましょう。役割分担を明確にするとスムーズに進めることができます。また、各部署に協力を仰ぐ場合は、実作業が必要なタイミングに合わせてマニュアルをメール送付するなど、継続的な広報が重要です。

オフィス移転マニュアル 2.移転計画を立てる

 オフィス移転に際して、真っ先に決めるべきことは、どういう段取りで進めるのかという事務所を移転するまでの全体スケジュールです。一般的に、現在のオフィスの解約希望日の3カ月もしくは6カ月以上前に、解約(予告)通知をしなければならないという場合が多くなっています。したがって、最低でも約1年前には「オフィスを移転する」という意思決定自体はしておかなければなりません。そのうえで、解約予告に間に合うように移転先の候補を挙げるなど準備を進めていく必要があります。また、もともと現在のオフィスの契約期間が定まっていたり、ビルの取り壊しが決まっていたり、あらかじめ移転時期がわかっている場合は、余裕を持って移転に向けての準備を進めましょう。
 そして、実務以上に大切なのは、「移転の目的は何か」「新しいオフィスに求める要素は何か」という、移転計画の発端となった理由です。計画当初の段階で「移転の目的と外せない要素」が明確になっていないと、具体的に移転先を決めるタイミングになって意思決定がブレてきてしまいます。移転計画の目的を明確にしたうえで、調べておきたいことなど実際に必要となる作業を書き出し、どのくらいのコストがかかりそうかも、事前にリスト化しておきましょう。

オフィス移転マニュアル 3.新オフィスの探し方

 社員たちの居住地や主な取引先企業へのアクセス利便性を踏まえ、移転先はどこがいいのかを検討しましょう。また、オフィスの機能についても、可能な限り現場の声を聞きながら決めたほうが、移転後の業務効率化につながります。なかには、現状のオフィスに対しての不満を解消するために、社員アンケートを取る企業もあります。「来客対応のできる会議室が足りない」「打ち合わせ用のフリースペースが足りない」といった不満があれば、移転後に解消できるかもしれません。全体のコストやスケジュールとの折り合いがつけば、ぜひ社員の声を聞いてみることをおすすめします。
 新オフィスに求める要望がまとまったら、必須条件と可能であれば盛り込みたい条件を整理してオフィスを探します。通常であれば、不動産仲介業者にオフィス物件を探してもらうのが一般的です。「移転してみたら希望と違っていた」ということがないように、新オフィスに求めることをわかりやすく業者に話しておきましょう。また、「希望に合う移転先を探し続けているうちに、どんどん時間が経ってしまい、後工程が詰まってしまった」というのも陥りがちな失敗例の1つです。全体のスケジュールと期限、優先順位をしっかり伝えておくことが肝心です。

オフィス移転マニュアル 4.各業者への見積もり

 移転先が決まったら、引っ越し業者や原状回復工事業者、新しいオフィスの内装業者、電気業者など各業者へ見積もりを依頼します。人的コスト削減のコツは、オフィス移転をトータルコーディネートしてくれる業者にお願いすることです。それぞれの業者に見積もり依頼を出すと、見積もり金額の確認と業者間の比較、業者選定だけでも膨大な手間と時間がかかってしまいます。また、重複するコストも発生し、費用もかさんでしまうことがあります。一括でコーディネートしてくれる業者にお願いすれば、スケジュール、費用の両面で無駄がなく、何より担当者の負担を減らせるのでおすすめです。

オフィス移転マニュアル 5.新オフィスの賃貸契約について

 新しいオフィスが決まったら、オーナーと賃貸契約を交わします。契約を交わす前に、賃料や共益費、更新料、礼金、賃料免除期間の有無、水道光熱費、清掃費などの費用について確認しておきましょう。契約書の内容はくまなくチェックし、入居後のトラブルを回避しておかなければなりません。疑問に思う点があれば、必ず「契約前」に質問し、クリアにした状態で契約を結んでください。「契約後」の確認漏れについては、対応してもらえないこともあります。
 また、自社で使用する部分の賃貸契約書の内容はもちろんのこと、同じビル内に入居している他の企業についてもよく確認しておくことが、不要なトラブルを防ぐコツです。休憩所や喫煙所など共用スペースがあれば、利用に関する規約なども詳しく調べておき、入居時には社員への周知を徹底しましょう。

オフィス移転マニュアル 6.各種届出を忘れずに

 オフィス移転に伴い、さまざまな手続きや届け出が必要になります。
 まず、法務局には、移転してから2週間以内に届け出をします。設立登記事項と同じ事項、会社設立年月日、移転した年月日を登記する必要があります。
 また、税務署および都道府県税事務所には、異動届出書を出します。異動後の納税地だけでなく、異動前の納税地にもそれぞれ提出する必要があるので注意が必要です。届出の提出先は、異動前後それぞれの納税地の所轄税務署長と都税事務所長および市町村長になります。
 さらに、オフィス移転前の社会保険事務所には、適用事業所所在地変更届を出します。オフィス移転から5日以内に出す必要があるので、事前の準備は必須です。
 労働基準監督署とハローワークには、新オフィスが前と同じ管轄の場合はその所轄労働基準監督署とハローワークに届け出を出します。管轄が変わる場合は、新しい所轄労働基準監督署とハローワークに届け出を出すことになります。こちらは、10日以内に異動についての届け出が必要になります。
 いずれの届け出に関しても、期間が5日以内~2週間以内と短いため、移転前にあらかじめ段取りをしておきましょう。

オフィス移転で必要な作業ポイントを大まかに覚えておこう

 オフィス移転はさまざまな手間がかかるので、一連の流れを押さえ、ポイントを確認しておきましょう。スケジュールと段取りが成否のすべてを決めるといっても過言ではありません。万が一にも抜け漏れがあると、会社全体として通常の業務に影響が出てしまいます。ごく細かい項目にいたるまで、チーム全体で確認できるチェックリストを作っておき、漏れのないように進めていくことが大切です。

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